時計修理技師である私がご提案する『安心して永く楽しめるヴィンテージウォッチ』。そのラインナップの一つが、カルティエマストタンクです。
(安心して永く楽しめるヴィンテージウォッチについては、こちらのブログで詳しく書いておりますので、ぜひご覧ください)
カルティエ マストタンク(Cartier Must Tank)とは

カルティエマストタンクは、1917年に誕生した名作「タンク」の普遍的なデザインを受け継ぎながら、1977年に登場したモデル。
それまでのタンクシリーズは金無垢ケースを基本としたラグジュアリーウォッチであり、限られた層だけが手にする存在でした。そこでカルティエが打ち出したのが、シルバーケースに金張りを施した“マストタンク”という新しい提案でした。
つまりマストタンクは、「タンクの美しさをそのままに、より多くの人が楽しめるようにしたモデル」です。
私が時計修理技師としてカルティエマストタンクを選ぶ理由
私がセレクトしている他のヴィンテージウォッチと同じく、カルティエマストタンクも時計修理技師としての修理経験と視点からセレクトしています。選定にあたって特に重視しているのは、次の3つのポイントです。
・丈夫なムーブメントが使われているか
・今後も修理を継続できる構造であるか
・修理部品を確保する仕組みづくりが可能か
これらの基準を満たしているモデルのひとつが、カルティエマストタンクでした。
カルティエマストタンクにはクォーツ(電池式)と機械式がありますが、私の修理経験上で優れていると感じたのはクォーツです。この年代のマストタンクに採用されているクォーツムーヴメントは、構造が非常にシンプルで、一つ一つのパーツも丈夫という特徴があり、結果として故障が少ない信頼性の高いムーヴメントです。
さらに、今後の修理部品の確保についても私の中で見通しが立つと判断し、カルティエマストタンクの中でもクォーツタイプのみをセレクトし、ご提案しています。

カルティエマストタンク(Cartier Must Tank)のサイズとデザイン
カルティエマストタンクのサイズについては、SMサイズ(27mm×20mm)とLMサイズ(30mm×23mm)をセレクトしています。
2つのサイズ差は縦横ともに3mm程。ラグジュアリーでアクセサリー要素の強い時計ですので、このサイズ差であればお好みで選んでいただいて良いかと思います。
女性はファッションスタイルや好みに合わせてSM・LMどちらでも選ばれる方が多く、男性はLMサイズを上品に合わせる方が多い印象です。また、ご夫婦やパートナーでLMサイズを共有されるケースもあり、楽しみ方の幅が広いサイズ感だと思います。
カルティエマストタンク(Cartier Must Tank) SM


カルティエマストタンク(Cartier Must Tank) LM

カルティエが100年以上守り続けてきた“普遍的なデザイン”もマストタンクの大きな魅力です。
マストタンクは、ベルトの延長線上に文字盤を収める直線的で無駄のない造形が特徴で、この一貫したシルエットこそがタンクらしさを際立たせています。シンプルで上品なデザインは、現代のファッションとも非常に相性が良く、どんなスタイルにも自然に溶け込む、完成度の高い一本だと思います。
セレクトしている文字盤のバリエーションもご紹介していきます。
▼ マストタンク アイボリーローマン

100年以上変わらず愛されてきたカルティエウォッチのアイコンともいえる文字盤。ローマ数字でクラシックな印象ですが、ベルトによってラグジュアリーにも、カジュアルにも合わせられる一本です。
・アイボリーローマンSM ¥330,000
・アイボリーローマン LM ¥385,000
▼ マストタンク アラビア全数字

マストタンクに限らず、カルティエウォッチの中では珍しいアラビア数字を採用したデザイン。一般的にはアラビア数字になるとポップになりがちですが、フォントにブレゲ数字を採用することで、ラグジュアリーさもしっかりと感じられる雰囲気になっています。
・アラビアSM ¥385,000
・アラビアLM ¥396,000
▼ マストタンク トリニティ

元々はリングから始まり、カルティエの代表的デザインにもなったトリニティを時計のダイヤルに落とし込んだモデル。イエロー・ホワイト・ピンクゴールドのカラーがあしらわれ、クラシックな印象。
・トリニティSM ¥363,000
▼ マストタンク 縦ローマン

タンクケースの縦長シルエットと相性の良いデザイン。端正で非常に品があり、キリッとした美しさがあります。
・縦ローマンSM ¥363,000
・縦ローマンLM ¥385,000
▼ マストタンク 飛びアラビア
軽やかな雰囲気がありますが、ポップになりすぎず、上品さとのバランスはさすがカルティエです。『クラシック×遊び心』というようなデザインは、マストタンクの中でも特徴的で、他の時計でも見かけない雰囲気を持つ、マストタンクの中でも特に希少なモデル。
・飛びアラビアSM ¥495,000
・飛びアラビアLM ¥550,000
カルティエマストタンクをベルトと楽しむ
ベルトの延長線上にダイヤルを収め、直線的で無駄のないデザインが特徴のカルティエ マストタンク。装着するベルトによって雰囲気が大きく変わるのも、この時計ならではの楽しみだと思います。
ただ、マストタンクはベルト幅・尾錠幅が特殊なため、現代では選べるベルトが非常に限られています。そこで当店では、ベルト職人と協力してマストタンク専用の特注ベルトをSM・LM用それぞれ製作しています。カルティエ純正の尾錠(14.5mm)も取り付け可能です。

ケースから続くラインを途切れさせないよう、ベルトはフラットな形状でデザインしています。職人が一本ずつ、細い番手の糸を使って丁寧に手縫いで仕上げており、ほどよいクラフト感と上品さを併せ持つ雰囲気に仕上がっています。
カラーバリエーションも非常に良い出来で、どれもマストタンクの雰囲気を美しく引き立ててくれる仕上がりになっていると感じています。
カルティエマストタンクの
金メッキについて
マストタンクの象徴ともいえる金張ケース。ただ、金の性質上、ヴィンテージとなるとメッキ剥がれや薄れ、過度な変色など、大きな個体差があります。これは私もマストタンクをご提案するうえで最も気を遣うポイントの一つでした。
一般的には、そのままの状態で販売されている個体も多いのですが、私がご提案するマストタンクは、すべて職人さんに依頼して再メッキを施してあります。そのため外観も非常に美しく、安心してお使いいただける状態かと思います。
とはいえ、金の性質上、使用環境によって変色等が起こることがゼロではありません。だからこそ当店では
・1年間のメッキ保証
・その後のアフターフォロー体制
をしっかり整えています。
“見た目の美しさ” と “安心して永く楽しめること”
その両方を叶えられるように仕上げています。



カルティエマストタンクのメンテナンスについて
主なメンテナンスについては、大きくわけて2つ。電池交換とオーバーホールです。

クォーツ時計は、およそ2年に一度の電池交換が必要です。私はその電池交換のタイミングを、内部の状態を確認できる“大切な点検の機会”と考えています。そのため、ご購入いただいた時計については電池交換を無料で承っています。
交換の際には、内部の状態から日頃の使用状況を確認し、今後の使い方についてのアドバイスもお伝えいたします。安心して永く時計を楽しんでいただくための点検機会として、ぜひお気軽にご相談ください。
また、どんなに優れたモノづくりの時計であっても、定期的なオーバーホールを行わないと、永く安心して使い続けることは難しくなってしまいます。
クォーツ時計も機械式と同じく歯車で動いており、防水性の維持という面でも 4年に一度のオーバーホールがとても大切です。当店では、オーバーホールの負担を少しでも減らせるよう、ご購入いただいた時計のオーバーホール料金を、通常よりお安く設定しております。安心して永く楽しんでいただくためにも、ぜひおまかせください。
時計修理技師の私としては、ヴィンテージウォッチはご購入いただいてからがスタートだと思っております。
およそ50年経ったモノですので、正直な所お使いの中でのトラブルを "完全に0" というのは現実的ではないと思っていますが、トラブルになった時に直せる修理技術と環境を整えておくことが大切だと考えています。
時計修理技師として、ヴィンテージウォッチを安心して永くお楽しみいただくための、手伝いができればと思っております。
