今年の4月、僕たちのお店でPOP-UPイベントを開催させていただいたフレグランスブランド『çanoma(サノマ)』。
イベントは想像以上にご好評いただき、その後リピートしてくださる方も多く、そしてなにより自分たちが本当に素晴らしいと感じるプロダクトを継続してご提案していきたいという想いから、この10月より常設することとなりました。
素晴らしい香水という以上に "素晴らしいプロダクト"
"メガネ・時計店なのに、なぜ香水なのか" そんな当然の疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。その理由はいくつかありますが、僕たちにとって一番大きいのは "素晴らしい香水だから、ということではなく、素晴らしいプロダクトだから" ということです。
僕たちは、自分たちが扱っている時計とメガネというアイテムについて、当然こだわりを持っていますし、特別な想いがありますが、僕たちはあくまでもブランドではなく、作り手でもない『小売店』です。
そんな小売店の役割の本質は "お客様にとって本当に価値のある素晴らしいプロダクトをご提案すること"。その本質においては、自分たちのお店を時計とメガネだけで完全に区切る必要はないのではないかと考えています。
çanomaとの出会い
私が最初にサノマを知ったのは、香水を一度もつけたことがなく、むしろ苦手だと話していた夫が突然買って帰ってきたことでした。
そもそも明確な理由がないと物を買わない夫なので、余計に気になって聞いてみると「香水どうこうというより、すごく良いプロダクトだと感じたんだよね」とのこと。
夫の人生初の香水となったのは『çanoma 3-17』でした。
数日後、私も気になって借りてみたところ、これが本当にいい香りで…それから共用するように。ただ、夫婦で同じ香りでいるというのは何となく嫌だったので(笑)、新宿伊勢丹で開催されていたサロンドパルファンに、サノマのクリエーターである渡辺さんがいらっしゃると聞き、伺いました。
香りを試す前に、まず渡辺さんから「今どんな香水を使っているのか」「過去にどんな香水を使っていたのか」を質問されました。私は10年程前にロンドンで購入したJo Maloneを何本か愛用していたこと、そして今は夫の『サノマ 3-17』を共用していることをお伝えしました。
その上で「多分このあたりの香りがお好きでは?」とおすすめいただき、特に心に響いたのが『çanoma 2-23』でした。
第一印象でローズとスパイスの香りが気に入りましたし、渡辺さんの説明の中にあった "かっこいい女性" というワードにも惹かれました。私自身、可愛いというよりはかっこよくありたいと思っているので、そのイメージにも共感し購入。
それ以来『サノマ2-23』を愛用していますが、今ではつけていないと何となく物足りなく、日々の気分を上げてくれるルーティーンの一つになっています。良い香りということはもちろん、一番印象的なのは "嫌な感じが全くしない” ということ。周囲から「いい匂い!何を使っているの?」と褒められることも多く、とても嬉しい気持ちになります😊
私たちがçanomaを好きになった理由
私たちがサノマを好きになった理由は、香りそのものの魅力はもちろんですが、香りづくりの考え方に深く共感したからです。特に印象的だったのは、サノマの香りがとてもロジカルに構築されている点でした。
たとえば、渡辺さんは「香りには地域性がある」と言います。人にとって身近な香りの代表例に『花』がありますが、そうした身近な香りが、その人の香りの好みを形づくるひとつの要素になるそう。そして、その「身近な花」は国や地域によって異なります。そのため、私たちがどんな香りを心地よいと感じるかは、その地域の環境や文化に大きく影響されているのです。
それを前提した時に、海外のクリエイターがつくる香りも素晴らしいものがある一方で、日本人である渡辺さんが "日本人としての感覚" に基づいてクリエーションを行い、 それを本場フランスの熟練した調香師が形にするというモノづくりのアプローチには、とても価値があると私たちは感じています。
また、渡辺さんが近年のフレグランスマーケットに対して抱く違和感は、恐縮ながら私たちがメガネ・時計業界で感じている違和感と重なる部分があります。近年のプロダクトは、PRやブランディングの割合が大きくなりすぎているように感じることがあり、もちろんそれらも大切ですが、そうした流れの中で『背景まで丁寧に汲み取り、作り手の強い哲学を感じられるプロダクト』というのは、今の世の中ではそう多くはありません。
だからこそ、私たちはサノマの香水に特別な価値を感じています。
「嗅いでみて、良い香りかどうか、それでいいと思います」
ロジカルな側面を徹底的に追求している渡辺さんの口から出るこの言葉は、とてもシンプルでありながら、強い説得力があります。PRやブランディングの割合が大きくなった近年のマーケットにおいては、むしろこうしたシンプルさこそが貴重であり、素晴らしいプロダクトの条件のひとつなのだと思います。
つらつらとサノマについて文章にしておりますが、視覚だけで香りをお伝えすることはできません。これより先は、ぜひ店頭にてご体感いただければと思います。
弊店では、サノマの香り全ての種類を取り扱っております。
『çanoma』
"上質な日常"をテーマに、2020年に渡辺裕太氏とフランス人調香師のJean-Michel Duriez(ミッシェル・デユリエ)氏によって誕生したフレグランスブランド。渡辺氏が日本人としての感覚に基づいたクリエーションを行い、それをJean-Michel Duriez氏が本場フランスの熟練した調香技術で形にしています。欧米人を中心とした香りづくりに一石を投じる。