眼鏡の魅力を探る座談会、後編 —— Globe Specs 服部さん × çanoma 渡辺さん × 内村眼鏡店 三代目 Miki

眼鏡の魅力を探る座談会、後編 —— Globe Specs 服部さん × çanoma 渡辺さん × 内村眼鏡店 三代目 Miki

3. スタイリングにおけるメガネの役割とは?

 

MIKI

お二人とも、ファッションやライフスタイルにこだわりをお持ちだと思いますが、メガネはご自身の中でどんな位置づけとか、役割になっていますか?

服部

僕の場合は、営業の場面では、相手に合わせて選ぶことが多いですね。仕事モードで「今日はこういう方に会うからこのメガネにしよう」と考えることがやはり多いかもしれません。

MIKI

私も同じような感覚があります。「今日はこんな雰囲気のお客様がいらっしゃるから、これにしてみようかな」とか。やはり仕事柄、相手のことも意識して選ぶことが多いですね。

渡辺

私はどちらかというと、ピュアな消費者としてメガネを見ているかもしれません。自分にとっては主役というより調整役のような存在です。足元と同じように、外したり整えたりすることで全体のバランスを取っています。

服部

それ、すごく共感できます!

渡辺

私はメガネの接客はしませんが、店頭に立つ機会は多いので、その時はブランドを立てる意味でも、あまり自分が目立ちすぎないように意識しています。たとえば、今日のような黒のセットアップや、スーツっぽいスタイルなど、落ち着いた服装を選ぶことが多いです。

ただ、足元やメガネはあえて“ハズす”。もちろん毎回そうするわけではなく、逆にラフな格好のときにはクラシックなメガネをかけたり、きちんとした装いのときには、それにふさわしい、例えばヒルトンクラシックのようなメガネを選んだり。そのバランスの取り方が自分の中では自然になっているんです。

服部

そういうスタイルは、最近になってからですか? それとも前から?

渡辺

わりと前からですね。見た目の話に加えて、僕は香水でも同じような『バランス調整』をしています。

以前、スーツを着てネクタイを締めていたような仕事の時は、見た目がきちんとしている分、香りだけはちょっとニッチなものを使ったりしていました。今は革靴を履くことも少なくなったので、足元・メガネ・香りの3つで自分らしさを整えている感覚です。

MIKI

とても面白いお話ですね!

渡辺

それに、メガネってアイコンとして使うことも出来ると思うんです。例えば、南海キャンディーズの山ちゃんのように、この人といえばこのメガネという印象をつくれる。香水も同じで、毎日同じ香りをまとって、その人らしさになるような。

私は、服はある程度ニュートラルにして、足元とメガネで印象を変えるスタイルが好きなんです。特に店頭に立つようなとき、毎回全身をコーディネートし直すのは大変ですよね。そんな時はセットアップを基本にして、足元とメガネでハズしをつくる。そうやって選んでいくと、結果としてスニーカーとメガネの数がどんどん増えていってしまうんです(笑)

服部

なるほど〜、そこがどんどん増えていくんですね。

渡辺

たとえばPOP UPで1週間立つようなときも、メガネや靴を変えるだけで、印象に変化をつけられるのがいいんですよ。

服部

確かに、変化が出ますね。それは面白い発想だなぁ。

MIKI

このコーディネートには、このメガネというような、お気に入りの組み合わせがあれば教えてください。 お話を聞いていると、きっちり決め込むというよりは、もう少し柔軟な感じですかね?

渡辺

そうですね。基本的に、メガネはコーディネートの調整弁のような存在なので、最後に選ぶことが多いです。そのときに、洋服の中にある色を拾うようにして選ぶことはありますね。

服部

ああ、それはわかります。

渡辺

コーディネートにたくさん色が入っていたら、その色を拾ったメガネを選びますし、逆に色数が少ないときは、眼鏡で色を差すことが多いかもしれません。

MIKI

なるほど、それは面白いですね。

服部

私はやっぱり、まず相手を意識して選ぶことが多いかな。その上で、やっぱり自分はちょっとハズしたい気持ちが強いんですよね。常にちょっとズレているくらいがちょうどいいというか(笑)

今日も寒いけど、春らしさを少し意識して明るい雰囲気にしたかったので、メガネも靴もクラシックにして全体のバランスを整えました。

MIKI

相手を意識しなくてもいいような、例えば休日などはどうですか?

服部

そのときは、自分の気分が上がるようなスタイルに合わせることが多いですね。

MIKI

私は店頭に立つ立場なので「今日はこのメガネをかけるからこの服にしよう」と、メガネを軸にしてコーディネートを決めることがよくあります。

今日はAHLEMのメガネをしっかりと印象づけたいと思ったので、それが引き立つようにシンプルな服を選びました。お二人はそういうのありますか?

渡辺

僕は逆ですね。服を決めてからメガネを選ぶタイプです。

服部

実は僕も、AHLEMにスーツを合わせるという選択肢もあったんですけど、今日のメンバーはきっとシックにまとめてくるだろうと思って、あえてちょっとクレイジーにハズしてみました(笑)

MIKI

そうだったんですね(笑)

みなさんそれぞれの考え方やスタイルがあって、面白いです。

 

4. 内村眼鏡店の印象について

 

MIKI

お二人の目には、内村眼鏡店はどのように映っていますか?忖度なしにお願いします(笑)

服部

以前にもお話したかもしれませんが、実は横浜にはセレクト型のアイウェアショップって意外と少ないんです。だからこそ、お客様には「こういうお店を待っていた!」と思っていただけているのではないかと、日々感じています。

渡辺

服部さんも全国いろいろなお店をご覧になっていると思いますが、私もあちこち回っていて感じるのが、地方に行けば行くほど「地域とのつながり」が本当に大切だということです。

その地域にどういった価値を提供出来るかが、そのお店の良さにつながっていく。

私が『良いお店』と思うのは、地域のお客様が求めていることの“もう一歩先”の提案を続けていて、それによってお客様もステップアップしていけるような、そんなお店ですね。

その意味で、内村さんのお店もまさにそういう存在だと感じています。きっと、眼鏡を深く知れば知るほど、もっと個性的で幅広いラインナップを紹介したいという気持ちもあると思うんです。

でも、それだけじゃなくて『この地域のお客様に今まず提案すべきものは何か』をしっかり考えながらセレクトされている。それがセレクトからも伝わってきます。

MIKI

そう思っていただけて、とても嬉しいです!

渡辺

この前のレスカのイベントのように、ヴィンテージの提案を取り入れているのも、まさにお客様にとって“もう一歩先”を示すような取り組みですよね。

まだ移転してから日も浅いと思いますが、すでに地域性をしっかり理解した上で展開されているお店だと感じました。

服部さんが言われたように、地域の方が待ち望んでいたお店でもあると思うし、それだけではなくて、横浜全体のアイウェア文化の底上げにもつながっていくのではないかと思っています。お店とお客様が一緒に成長していく様子が見える、とてもいいお店だと思います。

服部

本当にそうですね。これからは、商品ありきではなく、お店自体が主役になっていくような時代になると思いますし、そんなお店づくりこそが、お客様の心をつかんでいくのではないでしょうか。

MIKI

80年間、変わらず横浜でやってきた店として、地域にはとても思い入れがあります。今のお話を聞けて本当に嬉しいですし、そうなれるようにこれからも頑張っていきたいです。

 

5. 香水とメガネの共通点とは?

 

MIKI

これは渡辺さんへの質問になるのですが、香水とメガネって一見全く違うものに思えますが、共通点はありますか?

渡辺

はい、明確にあると思っています。両方とも『デザイン性』と『機能性』が重なり合っているところに魅力がある点です。

メガネはおしゃれの一部であると同時に、視力を矯正するための道具でもある。だから、見た目の良さと掛け心地、どちらも大切なんです。片方だけだと良いものにならない。

香水も似ていて、香りは構造や持続性など、ここでいう『機能性』の部分が実はとても重要です。なかなか説明が難しいのですが、確かにそれは存在していて、それが『感覚的(デザイン性)』な心地よさと合わさることで、良い香りになる。

一瞬だけいい香りでも、すぐに崩れてしまう香水もあるし、逆に『機能性』が優れていても印象に残らない香りもあります。大切なのは『機能性』と『感覚』のバランスがとれていること。それはどんなプロダクトにも通じる本質かもしれませんね。

MIKI

なるほど、これは面白いですね!

çanomaの香りについては、私が今まで持っていた香水のイメージとは違って、良い香りというのはもちろんですが、嫌な感じが全くしないというのが印象的でした。

渡辺

ありがとうございます、それは嬉しいです。

MIKI

自分に似合うものを選ぶ、個性を引き立てるといった面で、香水とメガネに共通する感覚はありますか?

渡辺

正直あまりピンとこないですね。個性を引き立てるとか自分らしさって、少し抽象的でよくわからなくて…そもそも個性って、自然とあるものじゃないですか。

MIKI

香水でもそう感じますか?

渡辺

はい。たとえば、ある女性がミスディオールのブルーミングブーケを使っている時とçanomaを使っている時で、どちらがその人の個性を引き立てているのか、という話になったとき、私はどちらもその人らしさだと思うんです。

何を選ぶかも個性だし、選ばない、つまり香水をつけないこともまた個性。個性と没個性って、はっきり線を引けるものではないと思っています。

MIKI

そうすると、店頭で香水を提案する際は、どんなアプローチをされるんですか?私はメガネの場合、お客様のファッションスタイルや好みを聞きながら提案しているのですが。

渡辺

私の場合も最終的にはçanomaの香りを提案することになりますが、主眼はその人の好みを知るということです。

ただし、好みを聞いて何かを提案するというよりは、一緒に好みを探るスタンス。実際、自分の好みを把握出来ていない方って多いんですよ。

だからまず「今使っている香水は?」「過去にはどんな香水を?」という質問を必ずします。そこから好みの傾向を帰納的に探っていく。それを踏まえた上で、この香りが合いそうとお伝えしています。

MIKI

たしかに!それは私も渡辺さんに聞かれましたね。

渡辺

私は、香水もメガネも、つけたもん勝ち、掛けたもん勝ちだと思っていて、結局は『あなたが好きかどうか』がいちばん大事。

問題は、自分が何を好きかを知らない人が多いということ。だから一緒に好きを探しましょう、という気持ちで接客しています。最終的にçanomaを買っていただかなくても、名前を覚えてもらえるだけで十分ですね。

MIKI

そこは私もわかる気がします!

話はつきないですが、盛り上がりすぎて2時間超えましたので、この辺で(笑)

私自身も、メガネやお店づくりについて新たな視点を得ることが出来ました。長時間にわたりお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました!

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